あんぎゃあがごはん!

雑多なことを記事にします。

アンティークメダイヨン(メダリオン)のオーバーホールをしてみた。

Twitterで呟いていたことをまとめてみました。

https://mobile.twitter.com/kaedeya/status/1217704411545255937

前置き

西洋アンティークはお好きですか?

嫁さんは西洋アンティークと呼ばれるものが大好きだ。

自宅も玄関ドア、家具、ソファ、調度品など割といたるところにアンティーク品を使っている。あげく納戸にはいくつもの未開封ダンボールが積み上がっている。古い家でもないのに何があのか本人すら把握できていない。

一方、自分には半分以上は ボロ古物 にしか見えない。

扱いはデリケートで面倒だし実用品としての性能は旧式だし換えの部品は手に入らない。そして値段が高い。なんでも鑑定団によく出てくる骨董品蒐集癖のあるおじいちゃんがいる家族の気持ちなど本当によく分かる。

しかし嫁さんが眺めて楽しむだけならともかく自宅の実用家具にアンティークがある。ということは 否応なしに自分もそのボロ古物に付き合う ということなのだ。(技術屋さん向けに言うならRAMS(信頼性・可用性・保守性・安全性)全部ポンコツなものを家の中心に置いて面倒みろ、と言うのと同じ)

アンティークに付き合うということは。

骨董の種類にもよるが家具のような実用品の場合、ほとんどの場合そいつはオンボロ家具だ。

長く付き合うにはそれなりのリペアやメンテナンスをしてやらねばならない。

テレビなんかで、ヨーロッパの家庭で古いものを大事に使っていて「これはひいおばあちゃんが使ってた机なのよ」なんてのはテレビでよく見かける。しかしあれはそれなりにメンテナンスできるものをちゃんとメンテナンスして使っているいるからそんなことができるのだ。日本に輸出されちゃうような()な西洋アンティーク家具なんて普通に使ってると数年持たないものだってザラ(実際それに悩まされている)。

なので我が家ではアンティーク家具を自分でメンテナンスする機会も(嫌だけど)発生する。そしてそれらは必ずと言っていいほど何らかのメンテナンスやカスタムを経ているものばかりだ。

↓は以前、我が家で塗り直した家具なのだけど塗る前に天板のペイントをひっぺがしたらこの通り。なんかやたらとパンキーなステッカーや模様が出てきてびっくりした。つまりオーナーは自分たちの前に数人いてオリジナル白→パンキーなブルー→白→アイボリーと塗り直してたことになる。自分たちのグレーでなんと5回目。

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西洋家具はメンテやカスタムしてなんぼ。

西洋アンティーク家具をよく見るとメンテナンスしやすい無垢材のものが多い。そして何度塗り直したのかわからないくらい塗り重ねているものもよく見かける。そのくせ見えないところは塗装をサボってたり、あからさまに素人工作の入ってるものもある。棚板が全部バラバラの材料とかカスタムした痕跡のねじ穴なんかもザラ。

そして嫁さんとボロ家具と付き合ううちに解ってきたことがある。

  1. アンティークはしょせん中古品なのである程度のメンテナンススキルが必要。
  2. 高価に見えるもの(そう、そいつは高価に見えるだけだ)でも容赦無くカスタムしても良い。

素人工作だろうと自分で直しちゃうのは「あり」。

そして自分仕様にカスタムするのも「あり」。

そうして使えるものを自分にとって最高の状態を保って使い続けていくうちに生き残ったモノだけがアンティークになっていく。

日本人は子供の頃から「大事にしようね、もったいないから壊したり汚しちゃダメよ」と散々言われ続けてきたせいだろう。元の状態を大事にしようとするオリジナル至上主義の人が多い。自分でカスタムペイントやリペアしようという頭が足りない。せいぜい100円ショップのつっかい棒で棚板を増やしたり補修シールを貼っている程度。

家具に傷がついた、子供が落書きした、引き出しが壊れた、そんな理由でもう使えなくなってしまう、価値がなくなってしまうと思っちゃう。 けどそもそも誰かに売るわけじゃないのだ。ならカスタムしたって素人工作でリペアしたっていいじゃない。

自分がオーナーの間は自分だけが気持ちいい状態で使ってやるのが一番だ。

もったいないって言葉を勘違いしている。


本題:メダリオンをオーバーホールしてみた。

嫁さんからの依頼

「おねがいがある。これ、直せる?」

「?」

メダイヨン。中の布地の交換とガラスドーム内側にカビが生えてるのどうにかしたい。」

現物確認。

「自分で直せないの?」「あたしのスキルじゃ無理」

「このドームガラスって取り返しつかないくらい重要?」「ドームは代わりが手に入る」

「中身は?」「見えにくいけどサルヴァトーレ・マルキの銘入り彫刻。x万円くらいで買った。似たのが出回ってるのみたから多分いくつかは量産されてる。」

「万一ででも壊れたら怖いやつやんw。工賃ただじゃ無理。」「うん」

「やったことないし補修材料使い回しできないから材料費も嫁持ちな」「うん」

「できることしかやらないから基本素人工作だけどOK?」「うん」

「できるかどうか見てから判断するから封印の針金と封印紙は破るよ」「うん」

「中身見て無理ってわかったらそこで作業やめるよ」「うん」

正直、値段はどうでも良い。

それがワンオフの銘入り彫刻で万一壊れたら作者は存命しないから代えがきかない代物だということ。なので値段はプライスレス。つまり∞円と同義だ。

しかもこいつが脆弱性MAXのメシャム石(海泡石)でできてるのを自分は知っている。

今風に言えばファンドなんかの石粉粘土で作られた美少女フィギュアのワンオフ原型みたいなもん。型抜き量産する技術がない時代(19世紀)の代物なので量産手段は同様見本から手彫りというもう嫌な色の汗しか出ない代物だ。保身に走りたくもなる。

リクエストまとめ

  1. ガラスドームの汚れ取りと磨き上げ
  2. 土台の布地張り替え

  3. 工作は私に一任。材料費支給。


1日目。まずは見てみよう。話はそれからだ。

見積もり。

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封印は紙と針金。

封印紙に遠慮なくカッターを入れペンチで針金をゆっくり曲げる。

土台を引っこ抜いた。ガポ。

とれた。

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確かにSalvatore Marchesのサインが入ってる。

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他の彫刻でも見たことがある。本物だ。

怖さ倍増

が、そうこうしてると

バキッ!!

メダイヨンを吊り下げるためについてたハンガー部分が、割れた

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木はパキパキに朽ちてモロくなってるしネジは錆びて腐ってる。

正直にいうしか。

「折れちゃった。多分使い続けてても折れたと思うけど。どうしよう?他の木で作ろうか?」「いらない。」

いや、身内でなきゃこんなこと言えん。

ガチでよそ様の依頼品でなくてよかった。。。

さらに像を留めてるであろう四角ナットをペンチでゴリゴリと回す。

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封印紙がパリパリと剥がれるが気にしないことに。

とれた。

茶色の布はもともとえんじ色だったことが判明。いくつかのオーナーを経てるはずなのに前のオーナーは気にしなかったのかそれとも直そうという気がなかったのか。

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足りない材料を考える。

とりあえず布、封印紙が要る。

封印の針金は破損しても多分虫ピンみたいな釘で代用できるだろう。

封印紙は売ってなさそうだし何がいいかわからない。嫁になんか考えてもらって支給してもらおう。

糊や接着剤は自宅にあるのを使えばいい。100円ショップで売ってた木工用ボンド万能ボンド瞬間接着剤があるからそれでどうにか。

どうせ見えないところに使うのだ。

補修用の塗料はウレタンニスが残ってるからそれを使おう。

ドームの黒い部分の細かい傷隠しは無理に顔料系のペンキを使うとかえって目立つ。油性の染料系がいい。そうだ。マッキー

うん。どうにかなる気がする

布は専門外なので聞く。

布はビロードだっけベルベットだっけ?そんな感じの光沢と滑らかな手触りの布地。そもそもどこの店で扱ってるかすらわからないし、実際の質感がわからないまま買う勇気はないので通販は無理。

一番近所のユザワ屋ひばりヶ丘店に電話するとベルベットはないけどハイミロンという布地ならあるという。

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とりあえず現物を見る限りよさげ。

ついでに検索。

staffblog.okadaya.co.jp

多分ばっちり。宝飾品店なんかで使われてるなら蛍光灯の紫外線くらいには耐えてくれそうだ。写真に写ってる似た布地の別珍は紫外線焼けして色が変わってたので少なくともこっちよりはマシ。洗濯できないのはどうでも良い。どうせ封印してしまうのだ。

どーにかなるんじゃね?

見積もり回答。

嫁さんに電話で返事。

「できそう。やってみるよ。

布地は多少余分目に買ってそのままの勢いで工事突入することに。

土台工事。

土台に新聞紙を押し込んで1次型紙を作り広告紙で2次型紙を作ったら早速ハイミロン布地をカット。

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元々の布地はガッチリと糊付けされてて取れなさそうだしかといって土台を作り直すのは 面倒 なのでこの布地の上に100円ショップの両面テープ、木工用ボンド、布にも使える万能ボンドのハイブリッドで糊付けすることに。

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フチが残ってるのは後で折り曲げてやるため。カットがギザギザになってるのはカッターナイフで切っちゃったから。普通に裁断ハサミで切ればよかった。(というか勝手にOLFAのサークルカッター買って経費に上乗せしとけばよかった。。)

今日はここまで。


2日目。素人工作!

先日の接着剤が乾いたので万能ボンドで布のフチを折り曲げ接着。

クランプが手元にないので適当なクッキーの空き缶を乗せて接着部分を固定。

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乾いたところでハサミで余分なフチをカット。

仮組み。

さっそく仮組み。

布に熱した釘で穴をあけ、彫刻像の固定穴を開けます。(化繊なので熱で一発で溶けた)

ちな彫刻を固定していた2箇所は片側はネジ、片側はヤワヤワの木製ピン。像を外すときに木製と気づかずにペンチで握ったらピンを壊したのでサイズの合う竹串をカットして代用。

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仮組みして色味を確認。

うん、悪くない。

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ここで嫁さん

「あと中の彫刻がドームにぶつかってるのが怖かったんだけど(過去完了形)。」

えっ!?聞いてないよ!!!


3日目。テイク1〜失敗。

土台のゲタ作成

脆い石の彫刻とガラスドームがぶつかってるのは確かに怖い。なので土台とドームの間にゲタを履かせることにする。かといって早々都合よく専用材料があるわけじゃないのでその辺の木材を適当にカットして接着剤で貼り付けちゃえ。

というわけで木、木、木、柔らかくて細くて、、、、あったw

コンビニの割り箸

適当に黒のマーカーで染めてカットしたらドーム側に接着。(ご覧の通り表側からはほぼ見えない。)

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そして、嫁さんが都合の良いタイミングで封印用の額装テープを買ってきたのでそれをカットして貼り貼り。

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封印して完成!!・・・いや失敗。

隠し釘を折り曲げてドームに打ちつけて封印完了!

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と思ったら釘を打ち付けた振動で中の埃やカケラが飛び散ってホコリがドームガラス に多数見える。

残念!やり直し!!

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改めて封印テープを剥がすとそれほど粘着力があるわけでもないのに封印テープに大量の封印紙やら木屑が付いてきた。

これはアカン。

年数が経ちすぎて元々の封印紙も土台も樹脂や糊が飛んでパリパリに朽ちている。

対策。

  1. 元々の封印紙はあきらめて削り落とす。
  2. 土台側は意味ありげなシールが貼ってあり面白いのでできる限りそのまま。
  3. ニスや瞬着を染み込ませて樹脂を補給し表面強度を上げる。
  4. 夕方にやったのでドームの曇りやホコリが見えてなかった。明るいうちにやろう。

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4日目。テイク2

再度ワイヤブラシ

ニス塗りが決定したので今度は元の封印紙を徹底的に剥がす。ワイヤブラシでゴシゴシ。塗膜も多少剥がれるけど裏面。飾れば見えなくなるので問題ないことにする。

多少色が剥がれたからといってペンキの再塗装はしない。相性の悪い塗料を上塗りすると下の塗膜を侵食して汚くなる可能性がある。リスクは取れない。

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前のオーナーについて。

さて。ワイヤブラシをかけたらドーム下部の封印紙の下から多数のドリル痕が出てきた。

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これから推察できるのはこのメダリオンもオリジナルのままじゃなくオーナーを転々としながら何回かのカスタムを受けてきたということ。

おそらく下図のような聖水盤をつけてた時期があるってことだ。

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多分このメダリオンのオーナーはうちの嫁さんまでに数人いて何回かのカスタマイズを受けている。

  1. オリジナルの楕円のまま使ってた。
  2. 楕円のままだと物足りないのでハンガーと聖水盤をくっつけた。
  3. 聖水盤が壊れたので取払ってオーバーホールして黒い紙で封印した。
  4. そのまま使い続けたら土台の布地が焼けたりしてカッコ悪くなったので手放した。
  5. うちの嫁さんが手に入れ、自分がハンガーを取払って布地の張り直ししてる。←イマココ。

そう。

このメダリオン像はこうやって生き続けてきたのだ。

ニス塗り。

土台側。割れのできてる部分には瞬着を流しこみ、さらに表面をニスで塗り固めてこれ以上l埃や木屑が落ちてこないようにしてやる。

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ドーム側には背面全体とドーム内壁面全部に。

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土台は昔のリペア痕が面白いので額装テープを貼る部分以外はそのまま塗らずにおくことにする。

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アルコール清掃。

ニスが乾燥したらガラスドームの清掃。

今度は日光のある明るいうちに念入りにネチネチと隅々まで。使えるものなら何でも使うので子供の使い古した歯ブラシや爪楊枝、キッチンペーパーを使いながらアルコールで曇りをとってやります。

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うん。いい感じ。

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再度封印。今度こそ。

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仕上げのレタッチ。

磨き上げたらドームの黒い部分の傷がやっぱり目立ってきたのでマッキー(黒)でレタッチ

うん。いい感じ。

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実際に飾ってみます。

うん!完璧!!完成!!!

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ちょうど嫁さんがお出かけから帰ってきたのでそのまま検品してもらって納品!!

完成です!!

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最後に

この記事はあくまで自分のものだからできる素人工作です。

なのでプロの方がどのようにやってるか(推測はできますが)全く知りません。

でも素人でもここまでできるよ、ということが伝われば幸いです。

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